現在の日本には、一定金額以上の高額の医療費を支払う際の公的な保障が用意されています。
高額療養費制度という名称で、条件により患者ごとに支払う上限額が定められていて、その金額以上の負担を負うことはありません。
しかし、高額療養費制度を活用しても残額の負担を支払うことが難しい場合もあるでしょう。
そんな時に活用できるのが、メディカルローンと呼ばれる融資サービスです。
メディカルローンの特徴やメリット、利用方法に加え、おすすめのメディカルローンを具体的に紹介をします。
高額の費用がかかる治療を受ける際に焦ることのないよう、事前に理解を深めておきましょう。
- 高額の医療費にはまずは高額療養費制度を活用し、その後メディカルローンを検討するのがおすすめ
- メディカルローンは銀行系と信販系の2種類がある
- メディカルローンには保険適用外の治療にも活用できるなどのメリットがある
- メディカルローンは転院することで一括請求を強いられるなどのデメリットもある
高額医療費の支払には「高額療養費制度」を活用する
高額の医療費が発生した場合には、まずは「高額療養費制度」の活用を検討しましょう。
高額療養費制度は、国民健康保険または各種健康保険が実施する制度です。
一般的な病院やクリニックで治療を受ける際には、高額医療費が発生する場合に医院やクリニック側から案内があるため、申請し忘れになるケースは少ないと考えられます。
治療内容によっては非常に高額の医療費が発生する可能性があるため、医療費支払いに困る事態がいつ起こるかわかりません。
事前に高額療養費制度のことを理解しておきましょう。
高額療養費制度は限度額以上の医療費支払いが免除される
高額療養費制度は、限度額以上の医療費支払いが免除されるという制度です。
限度額の設定は患者によって異なり、毎月の収入によって定められる標準報酬月額をベースに算出されます。
医療費の計算は、医療機関ごとに行われます。
一つの医療機関の中で、異なる診療科目を受診している場合はそれぞれの科目ごとに集計されることも理解しておきましょう。
高額療養費制度の申し込みをする際には、専用の「高額療養費支給申請書」を提出する必要があります。
医療機関のほとんどで申請についての案内や記載方法についての説明があるため、確認しながら記載漏れや書き損じなどをしないように対応しましょう。
いったん医療費総額を立て替えて支払う必要がある
高額療養費制度の適用条件に当てはまる場合でも、患者が負担するべき医療費の総額をいったん立て替えて支払う必要があります。
高額療養費制度の適用を受けるためには、上記のように申請書を提出する必要がありますが、健康保険側での審査及び手続きが完了するまでにおよそ3か月を要します。
このため、保障を受けるまではいったん医療費の支払いをしなければなりません。
治療内容によっては相当の負担を強いられることになるため、家計状況によっては支払いに苦労するケースも十分に起こりうるでしょう。
「高額療養費貸付制度」や「限度額適用認定証」を活用できることもある
健康保険には、いったん医療費の総額を立て替えて支払うのが難しい場合のことを配慮して、以下の2つの制度があります。
- 高額療養費貸付制度
- 限度額適用認定証
高額療養費貸付制度とは、高額療養費として支給される見込金額の8割相当額を無利子で貸付してもらえる制度です。
限度額適用認定証は、事前に高額の治療を受けることが分かっている場合に活用できる制度となります。
事前に健康保険の窓口に申請をすることで、限度額適用認定証を受け取れます。
治療を受けた医療機関の窓口で治療費の精算をする際に提示すると、限度額以上の立て替え支払いを免除されるため、負担を大いに軽減できるでしょう。
健康保険の制度の中にも、高額医療の負担を軽減できる仕組みは備わっているため、最大限に活用しましょう。
保険適用内の治療にしか活用できない
高額療養費制度は、大きく負担を軽減できる可能性のある有効な制度ですが、健康保険の保険適用される治療にしか活用できないというデメリットがあります。
したがって、高度先進医療など保険適用がなされない治療を受ける際には、全額自身で医療費を負担しなければなりません。
高額医療費の担保としては、高額療養費制度は不完全であるといわざるを得ません。
このため、高額の医療費への備えとして別の方法を検討しておくと安心です。
民間の医療保険では、健康保険の保険適用外の治療にも適用されるものがあります。
しかし、治療を受けない場合においても保険料の負担を必要とする点はデメリットといえるでしょう。
メディカルローンは医療費専門の金融サービス
医療費専門の金融サービスに、メディカルローンというものがあります。
各種金融サービスには、融資金の利用用途を限定しているローンがいくつかあります。
例えば、住宅購入やリフォームに特化した金融サービスといえば住宅ローンです。
また、子どもの教育費を賄う目的で資金を借りられるものを教育ローンといいます。
メディカルローンは、これら目的が限定されているローンサービスの1つで、一括での支払いが難しい高額の医療費に対しての融資が受けられるサービスです。
メディカルローンには銀行系・信販系の2種類がある
メディカルローンを大きく分けると、以下の2種類があります。
- 銀行系メディカルローン
- 信販系メディカルローン
医療機関ごとにローンサービスに提携していることも少なくありませんが、その場合のほとんどは信販系メディカルローンです。
銀行系メディカルローンを利用する際には、自身で銀行に申し込みをするのが一般的な活用方法となります。
自身で利用する金融機関を選択して、希望条件に合ったものを利用しやすいのがメリットといえるでしょう。
一方、信販系メディカルローンは、医療機関ごとに信販会社と提携を行なっているケースがほとんどです。
したがって、信販系メディカルローンを利用する場合は、医療機関の窓口で手続きを行なうケースが多くなります。
申し込みの状況によっては、信販系メディカルローンを利用する場合には短時間で融資申請が完了するケースもあります。
メディカルローンの対象となるかは診療内容による
メディカルローンの対象となるかは、診療の内容によります。
高額療養費制度が健康保険適用の診療内容にしか適用されないことに比べ、メディカルローンはその対象範囲がとても広い点は大きな特徴といえるでしょう。
例えば、以下のような診療内容にもメディカルローンは適用可能です。
- 美容整形
- 脱毛
- レーシック
- 審美歯科
メディカルローンの利用を検討している場合は、受診する医療機関に確認することをおすすめします。
特に、医療機関と連携している信販系メディカルローンの場合には、明確に利用の可否を判断してもらえることが多いでしょう。
医療費控除はローン契約年度に総額にて受けられる
メディカルローンを利用して支払いをする医療費は、ローン契約年度に確定申告の医療費控除の対象となります。
対象となる金額は、契約年度に金融機関に返済した金額ではなく、医療費の総額となります。
治療費は、医療機関に対していったん金融機関が立て替えて支払っている形式をとっており、その立て替え金額が医療費控除の対象です。
本来、確定申告の際の医療費控除申請には医療機関が発行する領収書の原本が必要になります。
しかし、メディカルローンを利用した際には領収書がないケースも多いため、代わりにローンの契約書や金融機関が発行する領収書を用意する必要があります。
メディカルローンの主なメリットは3つある
メディカルローンを利用するメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
- 高額な医療費を分割払いにできる
- 保険適用外の治療にも活用できる
- カードローンなどに比べて金利が低い
メディカルローンを利用する場合のメリットを理解して、様々な金融サービスとの比較を行い、自身に合った金融サービスを選択しましょう。
高額な医療費を分割払いにできる
メディカルローンの利用により、高額の医療費を分割払いにて対応できます。
一般的に、医療費は一括払いが基本です。
しかし、高額の医療費を一括で支払うのは資金的に無理があるケースもあるでしょう。
メディカルローンを利用すれば、本来は不可能な分割払いができるようになるため、長期的なスパンで医療費支払いを行っていけるのは大きなメリットです。
保険適用外の治療にも活用できる
メディカルローンは対応している診療内容が幅広いため、健康保険適用外の治療内容にも活用することが可能です。
前述のように、高額療養費制度は医療費総額を大幅に削減できる有効な制度ですが、健康保険対象の診療にしか適用させられません。
一方、メディカルローンであれば自由診療や高度先進医療の治療にも対応しているため、利用の範囲が非常に広いといえるでしょう。
カードローンなどに比べて金利が低い
メディカルローンは、カードローンなど他の金融サービスと比較して金利が低い傾向にあります。
種類 | 名称 | 金利(年率) |
---|---|---|
メディカルローン | イオン銀行 | 3.8~8.8% |
メディカルローン | 筑波銀行 | 3.5% |
消費者金融カードローン | プロミス | 4.5~17.8% |
消費者金融カードローン | アイフル | 3.0~18.0% |
一般的な消費者金融系カードローンと比較すると、かなり金利が低いことがわかります。
メディカルローンも金融サービスであるため、借金であることに変わりはありません。
少しでも金利が低い方が、利息負担を軽減できるため有利に借り入れができることになります。
金利の低さを優先したいのであれば、メディカルローンの利用には一定のメリットがあるといえるでしょう。
メディカルローンにはデメリットもある
メディカルローンには一定のメリットがある反面、デメリットもあります。
メディカルローンの代表的なデメリットを以下に3つ紹介します。
- 融資を受けるまでに時間がかかる
- 追加で融資を受ける場合には再度最初からの手続きが必要
- 転院をすると一括請求を受ける可能性がある
メリットとともにデメリットもしっかりと理解して、自身に合った金融サービスかどうかよく検討したうえで利用をしましょう。
融資を受けるまでに時間がかかる
銀行系メディカルローンを利用した場合、融資を受けるまでにかなりの時間がかかってしまうことがあります。
メディカルローンに限らず、銀行が顧客へお金を貸す際には警察庁のデータベースに確認をすることが義務付けられています。
データベースへの照合には最低1日の時間を要するため、銀行からお金を借りる際にはどんなにスピーディーなケースでも即日融資は不可能です。
さらに、メディカルローンのように目的が決まっており、金利が低い金融サービスの場合には厳しい審査を受けることが多いです。
メディカルローンの融資を受ける際には、1週間程度の時間がかかることも少なくありません。
急いで融資を受けたいと希望する方には、メディカルローンは向かないかもしれません。
追加で融資を受ける場合には再度最初からの手続きが必要
メディカルローンを利用して融資を受けた後、さらに治療費支払いの資金が不足することもあるでしょう。
その場合に再度メディカルローンを利用しようとしても、再度最初の契約から手続きを行う必要があります。
カードローンの場合は、最初に決めた限度額の範囲内であれば、簡単に追加の融資を受けられますが、メディカルローンの場合はそう簡単に融資を受けられません。
2回目以降のメディカルローン利用の際には、1回目利用時の負債が残っているケースが大半であるため、1回目の時よりも審査がさらに厳しくなることが多いです。
追加で融資を受けることを想定している場合は、メディカルローンは使いづらいことを理解しておかないといけません。
転院をすると一括請求を受ける可能性がある
治療を受ける医院を変更するなど、転院をした場合にはメディカルローンの債務残高を一括で請求される可能性があります。
転院時の一括請求は、特に医療機関と提携をしている信販系メディカルローンを利用した場合に多くみられる対応です。
メディカルローンを利用する前に、利用条件をしっかりと確認しておき、転院時に一括請求を受けるかどうかをチェックしておきましょう。
一括請求を受けて返済できるめどが立たないような債務残高がある場合には、転院をあきらめざるを得ない状況になるかもしれません。
メディカルローンのおすすめ金融機関5選
メディカルローンの金融サービスを提供する金融機関のうち、特におすすめできるサービスを以下に5種類紹介します。
それぞれに利用条件や金利の設定、借りるまでの時間等に違いがあるため、十分にそれぞれのサービス内容を比較したうえで自身に合ったサービスを選択しましょう。
名称 | 金利(年率) | 借入限度額 | 融資までの時間目安 |
---|---|---|---|
イオン銀行デンタルローン | 3.8~8.8% | 700万円 | 1~2週間 |
ちゅうぎん医療ローン | 2.875% | 500万円 | 1週間程度 |
つくばメディカルローン | 3.5% | 300万円 | 1~2週間 |
福岡銀行メディカルローン | 6.0% | 300万円 | 1週間から10日 |
SMBCファイナンスサービス(セディナ) | 3.9~5.9% | 500万円 | – |
歯科治療に特化したイオン銀行デンタルローン
名称 | 金利(年率) | 借入限度額 | 融資までの時間目安 |
---|---|---|---|
イオン銀行デンタルローン | 3.8~8.8% | 700万円 | 1~2週間 |
イオン銀行デンタルローンは、歯の治療に関する診療ならなんでも対応できる金融サービスです。
インプラント治療など、高額の費用がかかる歯科治療にも適用できます。
イオン銀行デンタルローンは2段階審査に対応しており、メディカルローンの審査が通らなかった場合は、そのまま目的自由のフリーローンの審査に移行されます。
幅広い診療に対応するちゅうぎん医療ローン
名称 | 金利(年率) | 借入限度額 | 融資までの時間目安 |
---|---|---|---|
ちゅうぎん医療ローン | 2.875% | 500万円 | 1週間程度 |
ちゅうぎん医療ローンは、地方銀行の中国銀行が提供する金融サービスで、様々な治療内容に対応しています。
中国銀行という地方の銀行が運営するサービスですが、全国の地域で利用が可能です。
最大500万円という借入限度額が設定できるため、高額の医療費が発生する治療を受ける場合にも頼りになります。
返済期限が長く使いやすいつくばメディカルローン
名称 | 金利(年率) | 借入限度額 | 融資までの時間目安 |
---|---|---|---|
つくばメディカルローン | 3.5% | 300万円 | 1~2週間 |
つくばメディカルローンは、地方銀行の筑波銀行が運営する金融サービスで、返済期限を最大7年間に設定できる使いやすいサービスです。
返済期限を最大の7年間とすると、毎月の返済額を少額に抑えられる効果があります。
適用可能な診療範囲も広く、様々な治療に備える目的で利用できるメディカルローンです。
一般的な医療費プランに加え、がん治療に特化したプランも用意されています。
がん先進医療費に特化したもので、一般的なプランと比較して審査条件や利用条件は厳しいものの、金利が低く設定されていてお得に借り入れができます。
2親等以内の家族に利用できる福岡銀行メディカルローン
名称 | 金利(年率) | 借入限度額 | 融資までの時間目安 |
---|---|---|---|
福岡銀行メディカルローン | 6.0% | 300万円 | 1週間から10日 |
福岡銀行メディカルローンは、2親等以内の家族の治療費を賄う目的で利用できる便利な金融サービスです。
通常、メディカルローンをはじめ様々な金融サービスは申し込み者本人の利用に限定されることが多いため、家族のために手続きができるのは大きなメリットといえるでしょう。
福岡銀行では、メディカルローン以外に様々な目的別ローンの金融サービスを提供しています。
1週間程度で借り入れが受けられるため、急に家族が高額費用のかかる治療を受けることになった場合におすすめです。
先進医療に活用できるSMBCファイナンスサービス(セディナ)
名称 | 金利(年率) | 借入限度額 | 融資までの時間目安 |
---|---|---|---|
SMBCファイナンスサービス(セディナ) | 3.9~5.9% | 500万円 | – |
SMBCファイナンスサービス(セディナ)は、先進医療の治療費に対応できる金融サービスです。
クレジットカードを運営するタイプで、医療機関の窓口で申し込みができるため、金融機関に赴く必要はありません。
最大500万円の借入限度額に対応しており、費用が高額になりがちな先進医療を受ける際の心強いサービスといえるでしょう。
3親等内の家族の治療に用いられる点も大きな特徴で、家族の急な治療費への対応にも活用できる安心の金融サービスです。
高額療養費制度で対応できない場合はメディカルローンの利用がおすすめ
高額の医療費が発生した場合には、まずは高額療養費制度の活用を検討することが第一です。
上限額以上の治療費支払いを免除されるとてもお得な制度であるため、活用しない手はありません。
しかし、高額療養費制度は健康保険が適用される診療内容にしか活用ができず、自由診療などの治療の場合は別の方法を採用する必要があります。
現在は、様々な金融サービスが利用できますが、医療費の資金を賄う目的の場合はメディカルローンの利用を検討しましょう。
金利が低く、医療機関で申し込みできるものも多い便利な金融サービスです。
メディカルローンのメリットには、以下のようなものがあります。
- 高額な医療費を分割払いにできる
- 保険適用外の治療にも活用できる
- カードローンなどに比べて金利が低い
一方、以下のようなデメリットも同時に存在します。
- 融資を受けるまでに時間がかかる
- 追加で融資を受ける場合には再度最初からの手続きが必要
- 転院をすると一括請求を受ける可能性がある
メディカルローンの利用を検討している方は、その特徴をよく理解し、最大限に活用しましょう。